メモ:目がおさまると、鼻が酷くなる。今年の花粉症は同時に来ないから、まだいいかな?
ファブリック 2018
監督:ピーター・ストリックランド
主演:マリアンヌ・ジャン=バプティスト
リチャード・ブレマー
初代ヴォルデモート! あの後頭部の人ね!
ファトゥマ・モハメッド
ストーリー
:恐らく70年代。
近頃離婚したマリアンヌさん。なんか公私ともにどんよりムード。
なもんだから、心機一転、デート!
じゃあ、まずはドレスを買おうとセール中のデパートにやってきた。
だが、そこで買い求めた赤いドレスは呪われていたのだ!
感想・バレ無し
:バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所という大変面白いんだけども、あまり人に薦められない映画がございまして、その監督の最新作です。
バーバリアンはトビー・ジョーンズ演じる主人公がやりたくないのにホラー映画に音響効果をつけることになっちゃって、やがて発狂していくって内容で大変面白いんですな。メタメタしてる後半とか、たまらんのよ。
で、その延長で見始めたもんだから、さあ大変。
今作のお話、中盤に一捻りあって、まあ、それでも判り易いんだわな。
だけど、その――表現方法といいますか、監督の主張といいますか、まあ、それがあまりに強い!
強すぎる!!
独特の官能表現や、誇張された社会風刺。70年代の風俗への熱いオマージュとかもガンガン入ってて、おまけに笑いまで取りに来るのよ!!!
一体どういう感情でこれを受け止めればよいのかww
これで難解であったり、こっちを突き放してくれたりしてくれれば、こう、全身で受け止めるモードとか全面戦争モードに移行して、そういう風に鑑賞できるんだけども、上記のようにやけにサービスが良かったりしてですね、鑑賞から時間が経った今現在も、考えれば考えるほど首がねじ切れるくらいに不可解な映画だったりします。
好き嫌いでい言えば、確実に好き。
でも、人に薦められるかってーと……いやあ……(汗)
以下ネタバレ感想
まずは、ネタバレでストーリーの捕捉を書きますが
リチャード・ブレマーが頭目で、ファトゥマ・モハメッドが束ねる魔女みたいな集団が、テレビのCMを通じて多分魔術的なモノで人を集め、多分、欲望的な物を収集している。(多分、魔力の素なんだろう)
で、恐らくめぼしい人間に呪いのドレスを売りつけ(売買は契約というわけです)、恐らくは魂を奪っている、もしくはドレスに吸わせている。
だが、多分だけど、契約(サバト?)の場だったデパートに欲望を集めすぎて、些細な事(老婦人同士の喧嘩)でバランスが崩れ、集めたカモ達は暴徒化。
結果デパートは全焼してしまった……って感じですかね?
ここで、多分とか恐らくって言葉を何度も使ってるのは、このブログに来てる人なら察すると思うけども、説明が皆無なのね。
で、それが割と堅実に撮ってあるマリアンヌさんと呪いのドレスの話の間に差し込まれるんだけども、この魔術側の話が強烈無比な個性で描かれるわけ。
魔術や呪いに関するシーンだから明度も高く、色彩も豊かでセットも奇妙。
ファトゥマさんが飾り窓越しにセールに来た婦人たちを見下ろすシーンとか、うわ、最高だなってもんですわ。
まあ、ここまではいいよ。
だけど、それを撮ってるテンションが、デイヴィッド・リンチとヤン・シュヴァンクマイエルがダリオ・アルジェント風に魔女映画を撮ってみました的な感じなんすよ。
お客を集める魔術的なCMなんて、ブレマーさん先頭に、ファトゥマ軍団が両手で手招きして、サイケな音楽がぶっこまれ、マネキンがぎゅんぎゅん回転すんのよ!?
もうね、呪いのドレスの話なんざ吹き飛んじゃうのよ!
マリアンヌさんのパートで、一番目立つ色は呪いのドレスの赤なのね。
だから、『確かにそこに魔術がある』っていう最低限の表現はちゃんとできてるわけ。
存在感はちゃんとあるのよ。
でも普通なら、そこからドレスのルーツや、実際の呪いの効果とかのあれやこれやをやっていくわけじゃない?
それが、ものすげー短く終わらせちゃうの。
いや、普通呪いのドレスときたら、『何らかの効果』があって、それの代価として『呪い』が降りかかってくるってのが相場じゃない?
着たらモテました、とかさ。だからこそ、話が転がるわけね。
ところが、このドレスは多分ご利益が無いのよ。
一発目のデート超不発だしww
しかも呪いってのが、じわじわ不幸が来るんじゃなくて、即死させる瞬間に舵を切る手助けをするだけなのね。小鳥や機械は殺したり壊せるんだけども、普通の人間は着ても肌荒れするだけ!
いや、勝手に動き回ったりするし、何より一度でも着たら死ぬらしいけども、随分大人しいな、おい!!
だから、まあ、ホラー映画としては成立させようとしてないと思うのね。
しかもマリアンヌさんは中盤で、道路にマネキンが出現したために事故死しちゃうのね。
で、主人公交代。
そして大体同じ話が繰り返され、次の持ち主の女性が偶々デパートを訪れたら暴動が起き、その際にドレスの所為で焼死するという行き当たりばったりというか強引な展開でお話はぶっつり終わるんですな。
ううん、やっぱりどう反応していいか判らないwww
しかも登場人物の行動にちょっと納得ができなかったりしてですね
(例えばドレスなんだけど、勝手に動き回ったり、破れても自己再生したりするのに、マリアンヌさんは返品しようとするだけ)
それゆえ、登場人物に一ミリも同情できないんですな。
画面の向こうで勝手に死んでる感が半端ない。
だからお話だけを観ると、すげーつまんないんだよね。
だけども、上記の通り、魔術側の描写とか、合間に挟まれる場面転換の映像のテンションの高さとかで、お話自体がどうでもよくなっちゃうのね。
要は、この映画の場合、ストーリーはおまけなんですな。
監督が作り上げた、この世界の薄皮一枚むこうの異常な世界を楽しむための言い訳程度の物なのよ。
だって、家庭の問題やら職場の問題で気を揉み、新聞のデート相手募集に唯一の安らぎを求めるマリアンヌさんと呪いのドレスのお話の間に――
多分デパートのバックヤードでマネキンを運んでくるファトゥマさん。
あれ? マネキンの股間にナニがついてないか!? って一瞬思った自分をアホだなあ、恥ずかしいやっちゃなあとか考えてた私。
パンツ脱がしたらホントに女性器がついてました。
しかも毛がもっさり生えてるって……。
オーマイガッって素で言いそうになったわ。
しかもそれで止まらずに
マネキンにオイルマッサージをおっぱじめるファトゥマさん。
それを見て、興奮し始めるブレマー氏!
マネキンの陰部から流れる多分経血を舐めるファトゥマさん!!
ブレマー氏、それを見ながら自慰の果てに、ものすげえ良い顔で絶頂!!!!
――なんてシーンをぶち込んでくるんだぜ!?
さっきまで何の話やってたっけ?
ってか、ここメインの話と関係ある?
ないよね?
なかったわ!!!
終始こんな感じ。
どうにも落差についていけないんだけども、一応最後にドレスに捕らわれた犠牲者たちの魂を、多分動けるマネキンであるファトゥマさん(実はズラで、恐らくオイルマッサージしていたマネキンは恋人なんだろうな)が見て笑うという、皮肉な小話、ブラックコメディとして帰結している、といえなくもない、のかな?
今、ヴェルナー・ヘルツォークの作品を観返してるんすけど、まさかそれよりも首を捻る映画にぶつかるとは思わなんだw
(いやヘルツォーク映画は解りやすいか)
まあ、本編で繰り広げられる珍騒動や魔術じみたデパートも、現実の大袈裟な誇張として見ていけばいいのかもしれないのね。
とするなら、全編これ、妙なテンションのブリティッシュジョークの塊と言えなくもない。
今風のモンティパイソン……が一番しっくりくる……かなあ?wwww
(前述のブレマー氏の絶頂顔をよりによってOPにもってくるわけだから、あそこで気づくべきだったのかも。ちなみにブレマー氏は万引きしたご婦人に首四の字をかけます)
というわけで、絶望的に人を選ぶ映画だとは思うけども、物は試しで観てみる価値はあると思いますです。
勿論上記のようなド変態セクシャルな描写があるので、そういうのはちょっとと言う人は絶対見ちゃダメw
そうでない人は――お暇で、メンタルに余裕がある時に、どうすかね?
以上!!
一応、本文中では『アート』という単語は使わないようにしました。
そう感じるかどうかは、人それぞれだし、アートってそう感じる人以外にとってはゴミ同然だからねえ。