メモ:寒暖差が激しすぎて、体がおかしくならない方がおかしい。
Fukushima 50 2020
監督:若松節朗
主演:佐藤浩市
ダニエル・カール
安田成美
荻原聖人
ストーリー:
東日本大震災発生。
迫りくるメルトダウンを回避するため戦いが始まった……。
という事実を基にした
あくまでも創作映画。
感想・バレ無し
:関東圏に住んでる人間にとって、震災と原発に対しては色々な想いがあるわけで、やはりというか、面白いと言っていいのかと悩んでしまったりする。
それでも、映画として突き放してみるならば
まあまあ の映画。
でも関東圏で原発の進捗状況をネットで確認しながら日々怯えて暮らしていた者である私は、ぶっちゃけ感動してしまった映画。
もう、感謝しかねーんだよ、この人達には……。
つまり大満足だ。
もうちょっと突き放して分析するならば
ガワが東日本大震災の、昔懐かし日本産パニック映画という感じか。
よって、感情を込めた台詞を立ちっぱなしで怒鳴りあうシーンがかなり多い。
防塵マスク付けてるから、しゃーないんだけど、その所為で誰が誰やらのシーンが多いのも困った感じである。
とはいえ、あの状況下は誰が誰やらの方が緊迫感があったりするんだが……。
また、当時の政権、東電、そして原発所員の実像とか実際の同行はとりあえず置いといて、全員が平等に未曽有の災害に翻弄される人々として脚色されて描かれていると感じた。
まあ、福一の再現ドラマという点においては、NHKスペシャルで故大杉連さんが吉田所長を演じた一連のシリーズがありまして、どうしてもそっちに軍配が上がっちゃうんですけどね……。
以下ネタバレ感想
そして所々文章がヒートアップしてくるといつも通り敬称略
まずは難点からいくべきか。
タイトルのFukushima 50が全然ピンとこない。
誰から誰までなのか?
あそこに最後まで残ってた人達――は50人には見えないし
じゃあ全員かと言えば、絶対そうでもない。
まあ、現在も色々とデリケートな問題を孕んでいるわけだから
このタイトルが落とし所だったんだろうとは思うんだが……困ったもんだ。
また、吉岡秀隆の演技は良かったんだけど
映画としては、あのキャラは余計だったんじゃなかろうか?
佐藤浩市周りか、渡辺謙周りの掘り下げに時間を使った方が良かったんじゃねーかな? じゃねーと、最後の遺影が全然事実を知らない人には唐突に見えるんじゃなかろーか?(とはいえ、半ドキュメンタリー映画の面もあるので、渡辺謙が最後にああなるのは、観客が全員知っているんだけども)
で、良い所。
すいません、ダニエル・カールと佐藤浩市がすれ違う所で泣きました。
ダニエル・カール演じる米軍将校は、福島で幼少期を過ごし、実は幼少期の佐藤浩市と遊んでいた――という事実は観客しか知らない!
とくれば――そう! ダニエル・カールの口から
オペレーション・トモダチ!!
ああ、これ、絶対最後すれ違うだけの奴だ!!!
うーわー、私、そういうのにメチャクチャ弱いんだよなあ……。
はい、きっちりやりました。
しかも、佐藤浩市だけがちょっとだけ気づいて
ほんとにちょっとだけ振り返るんですよ。
あれが、ね……もう、ベタベタのベッタベタなんだけど、泣けた。
それと冒頭の凄さね。
開始数十秒で東日本大震災!
私は白組のCGって、前は好きじゃなかったんだけど、今回の津波は凄かった。
海が盛り上がる時のアングルも含めて、久々にゾッとしたよ。
(とはいえ、直後の津波を目視して、「わーっ津波だー」と立ち止まって叫んでから逃げる職員二人の描写が、何とも陳腐でずっこけたんだけど)
で、そっから一気にSBO!
全電源喪失、ステーションブラックアウト!
ここら辺の、バンバン飛び交う専門用語を一切説明なしでガンガン見せていく大体三十分までは、潜水艦映画に通じるものがあり、無茶苦茶カッコいい。
プロフェッショナルが淡々と死力を尽くすっていいよね。(とはいえ、散々本やNHKで単語を覚えていたからのめり込めたのかもしれない。全然知識が無いと結構キツイ……かな?)
この人、ナイトヘッドの劇場版で初めて見たんだけど、ホントにいい演技するカメレオン役者でして、今回は激昂してイライラしまくる恰幅が良い渡辺謙を受け流す柳のような演技で、それでいて重大な局面が迫って来ると、能面のような表情がちょっと崩れただけなんだけど、ああ、この人も内面滅茶苦茶焦ってるんだなってのが一気に吹き出してくる感じでね、最高なんですよ。
最後の葬儀シーンで、段田安則と並んで最前列にいるって辺りもポイントが高い。
ちなみにNHKスペシャルの方では本店の安全屋の一人として、眉間に皺を寄せていましたな。
で、段田安則なんだけど、これまた良いんだよ(注:今回コレばっかりです!)
政府側と現場、そしてマスコミからガンガン圧力をかけられる立場で、出番自体は少ないけど、そのどれもが圧をかけられてるか、追いつめられているシーンという悲惨さ! たまりかねて渡辺謙に怒鳴り散らしたら、逆に怒鳴り返され、電話をガチャギリされるシーンなんぞ、涙なくしては見られないですわ。
そして佐野史郎!
管直人をモデルにしているわけで、意味不明の言語で叫ぶのかと思いきや、ずっとキレっぱなし。
でも、ですね、これ何を表現しているかと言えば、当時の国民の感情なんだよね。
何でやらないんだ?
どうしてそうなってるんだ?
何で誰も知らないんだ?
それじゃ、駄目じゃないか!
国民の代表の総理が、あの状況で国民の総意を体現してキレまくるのは、映画としては誠に正しい表現なのではないかと。
しかも、佐野史郎がやってることは、実は正しいってのがね。
現場に行ったからベントが遅れた――んだけども、佐野本人は「俺がいても良いから、さっさとやってくれ!」と言ってる。勿論周りが、「総理が被ばくしたら洒落にならん!」と気を回しているわけでね。ここら辺の、非常事態なんだからそんな事を気にするな! という佐野の意見の方が異端扱いされてしまっている状況がおかしいのだな。
以降の撤退なんぞさせるか、のシーンも、佐野は「俺もここに残る!」と宣言しているわけだし。
まあ、そういう直情的な所が受けて政治家になっていった人間なんだろうなと悲しくなるシーンでもあるわけで、最後に佐野がホッとするシーンが入っていて本当に良かった……。
二人とも、がっちり良い演技で、画面に出るだけで華がある。
眼福である……といいたいところだが
なんか二人とも、健康状態がね……
佐藤さんは、なんだか呂律が怪しいシーンがあったり、どうも顔半分が、口の左端が下がっている感じがして、何か不安になってきちゃってね……。
佐藤さんは今まで、良い役者できて、これから老けたら三國さんみたいな感じになっていくのかとワクワクしているので、どうかご自愛願いたい。
謙さんは、太りすぎ。
アメゴジのキングオブモンスターズで最高の退場をしたけれども、ご本人の体系がアメゴジみたくなってらっしゃるのは、まずすぎるんじゃないか(汗)
どうか、どうかご自愛を!
それ関連で言うと、津嘉山さんの老けっぷりが演技なのか素なのか判らなくて、ソワソワしたな……。良い役者さんには永久に生きていてほしいんだよなあ……。
で、後は出番が少ないながらも、かなりのインパクトを残す
石井さんと小倉さんコンビとか、名フォロー製造機のトモロヲさん、荻原さん、堀部さん。ピンポイントで締めてくる平田さん。
唯一の癒し要素の安田さん。
そして元の人物と似ていないようで、段々そっくりに見えてくる金田さんとか、もう渋い役者大集合で、たまんねえんだよ!
火野正平とか、燃え&萌えすぎて困っちゃうっての!
斯様に役者陣は最高、突出した見せ場もある。だけど全体としてみると、まあまあだったかなという印象に落ち着く映画ではないかと考える。
いや、セットとか何気に物凄くて、しかも時間経過で全員無精ひげ生えまくり。
あの事故の時の免震重要棟のトイレ事情、とか面白い(って言っていいのか迷うんだよなあ)要素も盛りだくさん!
いや、私はソフト化されたら何度も観るね。
なんなら買うかもしれん!
残念ながらコロナウィルスが猛威を振るう現状では、劇場に急げとは言えないが、機会があるなら是非見ていただきたい映画。
以上!