メモ:前回の投稿以来の映画館でござるが、映画館から出てきたら安倍首相辞任の一報。ううん、今は辞めてほしくないが健康面の問題なら致し方ないか。
事故物件 恐い間取り 2020
監督:中田秀夫
主演:亀梨和也
木下ほうか
以下、いつものごとく時々敬称略
ストーリー
:売れない芸人、山野ヤマメこと亀梨君はコンビで組んでおりました瀬戸君演じる中井大佐からコンビ解散を告げられる。
途方に暮れる亀梨君。
だが、構成作家へと転身した瀬戸君も、企画が通らず困り気味。
そんな折、瀬戸君がどう見ても北野誠な木下ほうかプロデューサーに
『友達の芸人が事故物件に住んでいて~』と
事故物件怪談を話してしまう。
番組打ち切りの危機に悩んでいた木下ほうか、即決!
それ、ええやん!
ヤマメ! そこ住めや!
こうして、亀梨君は事故物件に住みながら
カメラで生活の一部始終を撮ることになる……。
感想:バレなし
ホラーとしても、
一本の映画としても、
ちょっとこれは……な出来。
とはいえ、『おまえら行くな。』ファンとしては
一応見なくてはいけないもの、かなあ……。
元々は『北野誠のおまえら行くな。』という心霊ドキュメンタリー番組のミニコーナーから出発したのが、今回の原作でありまして
北野誠が『おまえら』で心霊現象が起きるアパートに
固定カメラを設置して検証する回があったんですな。
で、その延長戦として、売れてない芸人を事故物件に住まわせて四六時中カメラを回し、何か撮れたらギャラを払う、という
大変面白い企画を実行。その際に「やりたい奴いる?」と聞いたら
手を挙げたのが松原タニシだけだった、わけなんです。
以降、松原タニシは『事故物件住みます芸人』としてブレイク。
で、遂には今回の映画という、レンタルですが長い事追っかけてきた人間としては、素直におめでとう!なわけです。
でも、ですね
松原タニシの事故物件怪談は、『実話怪談』の中でも
かなり特殊な立ち位置にありましてですね
簡単に言うと『幽霊そのもの』はほぼ出てこないんですね。
『我々の実生活の延長程度』の霊現象と、多分これからも増え続けるであろう『事故物件』が巧い事かみ合ったからこそ、支持が集まったと思うんですな。
で、それを元にした
バリバリのフィクション
となってしまうとですね、まあ非常に食い合わせが悪いんですな。
だから目指すべきは、映画『残穢』のドキュメンタリータッチな部分だったと思うんですが
出来上がってみたら映画『残穢』の悪い部分だけを強調したような映画になっていて、クライマックスは普通に
「は? マジでなんでこんな映画作ったの?」
と声に出して言いました。
勿論小声で(白目)
以下ネタバレ感想
まずは良い所。
ええっと、松原タニシの事故物件怪談を結構読んだり聞いたりしている人にとっては、物語として再構成された怪現象にニヤニヤできるんじゃないかしら。
例えば、居間に行く前に気分が悪くなって気絶した話や、引っ越しを手伝った芸人仲間が別々の場所でひき逃げに会う話、カメラを向けたら空間に顔認証、タニシの顔を撮影すると真っ黒、等々……。
これが映像化されて見れたってだけで、ファンとしてはニヤニヤしちゃってですね、ぶっちゃけ元は取ったなという気分なんですわ。
後は――
亀梨君たちが降りたのに、誰も乗ってないエレベーターがさりげなく立ち入り禁止の六階に上がっていく場面とか、駐輪場の端に佇んでいる赤い服の女とか、CGに頼ってない怪現象の場面は緊張感があって、中々良いんじゃないかと。
脇役の俳優が個人的に当たりなのもよかった。
定食屋の主人役で宇野さんが出てきて、ワンシーンだけども良い演技をしておりましてですね、心底、忌まわしい事件を口にしてる感がたまんねえっす!
木下ほうかさんの、北野誠チックなプロデューサーも最高。
そんなに高圧的じゃない押しの強い人、という絶妙な感じが好感触でして、『やらせはやめてな』とさり気無く言うシーンがとてもいいんですな。
(この所為で、馬鹿正直な亀梨君が追い詰められていくのも巧い)
それと江口のりこさんね。
このキャラが本当に良かった。
飄々とした喰えない不動産屋役で、そういう現象は腐るほど見てきたよって感じがぴったりはまってるんだよなあ。
神棚とか、除霊指導とか、この映画最大の笑いどころだと思うし。
まあ、それだけに雑な退場に心底がっかりしたんだけども……
あとは冒頭の傘が
最後の最後に役に立つのは――ギリギリOKかな。
まあ、あれの強度云々は忘れましょう。
そういうものは、そういう時に、そういう働きをするものなのです。
で、悪い所なんですが――
CG--いや、あの黒頭巾か。
まあ、多分『呪い』を物凄くわかりやすく可視化したんだと思うのだけども
もうほんとにダサいんだよ。
いや、外見がこの前までやってたゲゲゲの鬼太郎の『名無し』そのままなのよ。
アニメなら良いんだけどもね、実写でやっちゃいかんでしょ。
で、私としては、フードを取ったら、絶対亀梨君が出てくると思ってですね、深淵を覗いて云々な展開になると思ってたんですよ。
だから、クライマックスの物凄く唐突に始まる除霊大合戦は
亀梨君の幻覚で、生配信を見た奈緒さんと瀬戸君が、その日のうちに大阪から東京まで助けに来るわけないだろう! 何勝手な夢見てんだよ。ウギャー!!
……ってオチだと思ってました。
いや、そういう自分勝手な妄想を見る伏線がなかったんで、嫌な予感はしてたんですけどね……まさか、そのままとはねえ……これ脚本通りなのかね?
で、まあ、見た皆さんならお判りだと思いますが、二人は本物で
黒頭巾を除霊してハッピーエンド……かと思いきや江口のりこさんをファイナルディスティネーション殺害してエンドって……
え? これで怖がれってこと?
ってか、あの黒頭巾が次々と死者たちを召喚するのは百歩譲って良しとしても
(あの部屋で死んだカップルと、そこらの霊なのかね? とはいえ、冷蔵庫からデブ女が下着姿で出てくるって……笑わせようとしてる?)
それを高田純次から買ったお守りで次々と消滅させるって描写はどうなんだ。
高田純次が三木大雲和尚的な立ち位置だとしたならば
(三木大雲さんは、よく松原タニシ氏を除霊している人です)
木下ほうかが途中から出てこなくる分、後半は東京で高田純次と絡ませればよかったんじゃないのか?(適当に言ってお守りを売りつけたキャラだけど、お守りは効いたし、亀梨君の隣に黒頭巾がいるのも当てているっぽいし)
更に言うなら、霊を直接的に見せすぎるのも実に面白くない。
駐輪場の赤い女は良いんだよ。
あれは、はっきり見えるのが怖いから。
でも、例えば六階から降りてくる男とか、殺された老婆が結構はっきりと映っちゃうのは怖くないうえにつまらない。
六階から降りてくる男は、元の話通りに、薄っぺらい男、もしくは、瀬戸君の後ろにぴったりついてくるでいいじゃないの?
どうして、ああしたかね?
婆さんも半透明で空中に浮いてるしさ……ゴーストバスターズ2のヴィゴみたいになってんのよ……。
……と、文句しか出てこないんだけども
亀梨君のキャラは個人的になかなかいい過去を持ってるし、奈緒さんのキャラも結構好きなんで、二人が(まあ、突っ立ったままなんだけども)喋ってるシーンはほっこりできたりするんだけど、そういう目線で見ると、短絡的すぎるんだよね。
いや、中田監督はホラー撮りたくないってのは知ってるんで、きっとまあ、そういう事なんだろう、と諦めの境地でスクリーンを見ていたんですけどね……。
つーわけで、ものすごく中途半端な映画です。
恋愛ものとしては浅く
ホラーとしては怖くなく
実話怪談ファン、『おまえら』ファンとしては、違和感とか残尿感が残る。
主演三人のファンならば、ややお薦め、かな?
まあ、そんな感じ。
以上!
余談:
私としては、二件目の事故物件がクライマックスになると思ってたのね。
これ、元の怪談だと『無職の息子に老婆が殺された部屋』という映画そのままの話で、映画はオチ以外をかなり忠実にやっているんですわ。
タニシ氏が録画し忘れて、鎌倉監督(『おまえら』のシリーズ監督)に大目玉を食らった、排水溝から毛が出てくるシーンも遂に実写化されたしねw
で、この怪談のオチなんですが、この部屋にいる間に映画では省かれた現象がありまして、それが『ドアノブを誰かがガチャガチャする』というものなんですが、松原タニシ氏は『気持ち悪いから無視した』んだけども
後日、『老婆を殺した息子が、最近、出所後に別件で逮捕された』事が判り
じゃあ、あの時ドアノブをガチャガチャしていたのは……
もし、あの時ドアを開けていたならば……
という、物凄く怖いオチに行きつくわけですね。
私はこれが、映画のクライマックスだと思ってたのよ。
で、ロフトの事故物件を先にしとけば、二重の事故物件になりかけて足を洗うって展開になるかなって。
にしね・ザ・タイガーはどこに出てたのかね?
どうせなら鎌倉監督と北野誠氏、西浦和也氏にも出て欲しかったなあと。
(オーケイ岡山氏は出ない事がネタになるので、出さない方向でw)