メモ:映画で今一番重要なのは、もしかしたら、どうやって公開するか? なのかもしれない。
クロール 凶暴領域 2019
監督:アレクサンドル・アジャ
主演:カヤ・スコデラリオ
ストーリー
:大型ハリケーンが迫るフロリダにて、水泳大会で今一な結果しか出せなかった主人公のカヤさんは、離婚調停中+不仲爆発の父親との連絡が取れてないと姉から連絡を受ける。
姉ちゃんは言うばっかりで、全部あたしに押しつけやがる!
まあ、なんてこというのかしら!
それはそうとして、姉さん愛してるわ。
あたしもよ
というアメリカンな会話の後、父親を捜しに警察の検問を潜って洪水寸前の昔の家に来たカヤさん。
だが、地下室で待っていたのは、負傷した父親と
いい感じの大きさのアリゲーターの群れ
果たして二人の運命は!?
賢明にも地下室に降りず、上でウロウロしているワンコのシュガーの運命は!?
感想・バレ無し
えーっと、一応監督のファンだけど全作観てるわけではないので、大体雰囲気を伝えると――実はピラニアって言うよりも、ミラーズの方が近いかな。
動物パニックの部分はよくできてるけど、地味。
ドラマ部分は結構きっちり作ってあるけど、地味。
ともかく地味。
つまらなくはない。
でも、面白くはない。
というか、誰に見せたい映画なのかが今一判らない。
そんな映画。
以下ネタバレ感想
まずは良い点からだけど、なんといっても ワニがよくできてる。
パイプに尻尾のひれが当たって音を立てる描写なんて、世界初なんじゃねーかな?
あとは、親子の絆が戻る為に、二人がかなりの犠牲を払うっていうのもいいですな。危機を前に二人が手抜きなく全力で色々やって、それでも手におえないトラブルに翻弄されていくのも良い。
また、最大の敵が実は『元々住んでいた家』つまりは『幸せだったころの記憶』というのも中々。
これがガッチリと二人を掴まえて離さないから、今の状況に結果的に陥ってるわけで、これから、つまり家から無事に出る為に右往左往するんだけど、結局は鉄砲水で家に戻されたりしてね、こう『お前らも道連れだ』的な家の執念と言いますか、そうしますとアリゲーターの群れも、使い魔と言いますか、まあ、そういうもんなんだろうと。
とはいってもですね、この手の映画で一番肝心な緊張感が途中から無くなっちゃうのは如何なものか。
だって、主人公のカヤさん、太腿にどでかい穴が大量に開いてるのに
平気で泳いでるんだもの。
親父に至っては肩は噛まれるは、水死するは、腕はちぎられるは、で結果的に蘇生して、歩いて屋根に登って、片手でカヤさんを水から引っ張り上げてるしね。
いや、それ、ドラマ上必要なのはわかるけども
お前ホントに人間かよ?ってなるわな。
で、おどかしも、ワンパターン。基本的には物陰からアリゲーターが飛びだしてビックリの繰り返しなんだわな。
ちなみに一番びっくりしたのは、最初の方で台所の窓に突っ込んでくる木だったりする。
となれば、アジャ特有のやりすぎ残酷描写に期待してしまうんだけど
アジャって残酷描写をグッチャグチャなんだけど、汚く撮らないという稀有な才能の持ち主でして、そこに期待しちゃうんですが
それはまるで駄目。
一応一瞬だけど、アリゲーターが四方八方から寄ってきて、人体がコマ切れになる素敵シーンあり。でも、ホントに一瞬。
で、お話の方は前述の通り、ドラマとしてガッチリやりすぎちゃって
ピラニアの時みたいなはっちゃけアホ話ができない。
……これって、アジャが撮る必要があったのか?
サム・ライミが製作に名を連ねている時点で地雷かもしれないと思ってたけど、ここまでふぬけた状態になっているとは……。
で、バレ無し感想の所に書いた問題にいくわけで
アジャ好き→物足りない
B級映画好き→描写が一々地味で物足りない
ワニ映画好き→数多のワニ映画よりもリアルにしたけど、パワーダウン。全然物足りない。
誰に見せたかったの?
うーん……あのね、こういう作品でドラマを絡めてやるならば
明確なライバルキャラ、つまりはボスキャラが欲しいのよ。
鉄砲水であれだけ嫌っていた家が、結果的に主人公を救うなら
そして家は多分将来取り壊されるのが確定で二人が解放され和解したというのなら
それに相対する、ライバル役のワニを配置すべきだったと思う。
例えば、カヤさんの足を噛んで、恐らくは水泳選手としての生命を奪い片目を潰された奴なんかが良かったんじゃないだろうか。
あいつが要所要所で追っかけてきて、ラスト間際のデスロールでカヤを追い詰めたけど、発煙筒で残った目を潰され、それでも追ってきて雨樋に噛みついたが、流れてきた物にぶつかって(このぶつかる物に因縁を持たせればいいと思うんだけど。例えば、庭にあったあのブランコとか)エンド、とかね?
とまあ、こう、ワニ映画なのに食い足りない、とオチが付いた所で以上です。
まあ、今のご時世、大予算でモンスターパニック映画を撮るというのは、きっと色々あるんでしょう。
……だから、多分、残酷描写のある、そこそこ予算のかかった映画はネット配信の方が良い時代になっちゃったんでしょうね……。