メモ:なりたい職業はオーバールック・ホテルの管理人です(大嘘)
シャイニング 1997
監督:ミック・ギャリス
原作:スティーヴン・キング
レベッカ・デモーネイ
ストーリー
:家庭内に問題を抱えた男、ジャック・トランスは、オーバールック・ホテルの冬季管理人として就職する。
彼のような飲んだくれにホテルを任せるのは、正直ムカついて仕方がないと毒を吐く支配人のスチュアート・アルマン。
一方、彼の息子、ダニー・トランスは『かがやき』と呼ばれる才能を持つ超能力者であった。
そんな彼に、警告する同じく能力者のホテルのコック、ディック・ハローラン。
だが、ホテルに巣食う悪霊は、ダニーの持つ『かがやき』を狙って、思いもかけぬ方法で家族に揺さぶりをかけてくる。
具体的に言うと
スズメバチとトピアリーです。
感想:バレ無し
90年代キングの甘ったるいシャイニング。
勿論これはこれで面白いし、キューブリック版よりも原作に忠実な所も多い。
多いんだけど――
以下ネタバレ感想
ジャックが良い人すぎやしませんかね?
いや、うーん、ここまで子煩悩だからこそ、ラストの綱引きになるんだけど
流石に予定調和と言いますか、いや、これはこれでありだなとは思うんですが
原作と離れすぎてんだよなあ。
原作者が原作を壊しにかかっているってどうなの?
キューブリックに散々文句言っといて、自分でやってみたら
今はもっと甘い風味の方が良いんじゃねって
オイ!
指揮棒振ってる場合じゃねーぞ!(キングは怨霊バンドの指揮者役でドロドロに溶けるメイクもやったそうだが、本編ではカット。まあ、シャイニングとしてはやり過ぎだわなw)
でも長尺だからこそ映画版でカットされたイベントが映像化されて見れるってのは原作信者としては嬉しい限りで、トピアリー軍団とかCGしょぼいんだけど、嬉しくてねぇ……。
ただ、私が原作で最高に怖いと思った
雪洞に閉じ込められたジャックが、なんとか脱出して
振り返ったら雪洞から小っちゃい手がバイバーイってひらひら動いてる
が映像化されてないんですよ!
私、あそこを自分の部屋で読んでる最中に寒気を覚えて、
振り返ったらその手を見ちゃった(要するに幻覚を見た)んだけど
……あれって、そんなに怖くないシーンなのかね?
さて、映画版に続き原作と一番変わっていた点は
やっぱりホテルが燃えるくだりでした。
今作は
〇ダニーを追跡して、ジャックはボイラーの圧力を下げ忘れる。
〇ジャック、一瞬正気に返ってダニーに逃げるように言う。ダニー、拒否。
〇ホテル、ジャックの顔面を槌でぐしゃぐしゃに砕き、最後の良心の仮面を破壊。ジャックを完全に支配する。
〇ダニー、ホテルに「お前ボイラー圧下げるの忘れてるやん」と言う。
〇ホテル発狂。ダニーとハロラン、ウェンディ無事脱出。
〇ホテル、ボイラーに辿り付き圧を下げる。「やった! 勝った! 第三部、完!!」
〇ジャック正気に返る。
〇ボイラーの圧力を上げるジャックに、ホテル側支配を強めようとする。
〇ダニー、援助。ジャック、何とか踏みとどまる。
〇ダニーの力を取り込んで、ホテルの一部(前管理人のグレィディ)実体化。
〇ジャック、恐らく「かがやき」でダニーに抵抗しろと通信。
〇グレィディ、再び霊体化。ジャック、これ幸いと圧力を上げまくる。
〇「諸君、パーティの時間は終わりだ」
〇ボイラー爆発。オーバールックホテル、大炎上。ジャック、勿論死亡。
……という感じでございまして
しかもエンディングにて原作のトニー=ダニーの成長した姿が大学の卒業式で披露。
そこにジャックの幽霊出現。
ダニーに投げキスをする。
キスキス。
これが欲しかった。
で、終了。
原作には、この父子での投げキスのやり取りは無いんです。
これが今作の方向性というか、甘ったるいキングの象徴といいますか
でも、ぶっちゃけこのくだりでジーンときちゃったんだよね。
まあ、直後にトニー役の俳優、顔が素になってて白けるんだけどさw
さて、ちょいと真面目な話をすると
このジャックはもろキング自信なんだよね。
アル中で家族に暴力、小説(ジャックは戯曲)を書いてるが
デビューの見込みは無く人生どん詰まり。
そんな最悪だった自分を振り返って書いてるわけだから
キューブリックにジャックは最初から狂人に近いなんてやられたら
……ねえ?
いや、キング自信も奥さんがキャリーの原稿をゴミ箱から拾わなかったらキューブリック版みたくなってたかもしれないわけでね、そうすると映画版は
デビューできなかったキングのなれの果て、って見方もできたりするんじゃなかろうか。
あとちょっとした小ネタだと
今回のテレビ、ソフト版吹替えのジャックは大塚明夫氏でございまして、ラジオから流れてくるジャックの父親の声は大塚周夫氏です。
つまり本当の親子であのシーンをやってるわけで
「お前はいつだって、そうだった!」
「俺を見ろ!」
「父さん! 俺は……俺は……」
という明夫氏が周夫氏に怒られている、いやさ、追いつめられている強烈な音声が聞けます。この時の二人の演技、どっちもスゲエんだよ。