メモ:暑いのに長袖が脱げない!(ビクンビクン)
透明人間 1992
監督:ジョン・カーペンター
主演:チェビー・チェイス
ストーリー
:モニターに囲まれた部屋でカメラがまわっている。
誰もいないはずの椅子が動き、男の声が聞こえ始めた。
「僕の名前はニック・ハロウェイ。僕は透明人間だ。これが見えるかな?」
空中に浮き、咀嚼されたガムがゴミ箱へ捨てられる。
「さて、時間もないし話をしよう。何故こうなったかというと――」
透明人間の告白が、今始まる!
感想・バレ無し
:生まれて初めて見た透明人間映画にしてファンであるジョン・カーペンター作品の中では異色であるロマコメSF。スターマンとかあのあたりですなあ。
ぶっちゃけ面白さとしては中の上って所なんだけども、やっぱり生まれて初めて見た透明人間ってのが効いてて、好きな映画でありますな。
原作はウェルズではなく、H・F・セイントの「透明人間の告白」。
故に、数多の透明人間作品とは視点がちょっと違うのね。
だから、できれば1933年版辺りを見てから鑑賞すると、ニヤッとできるんじゃないでしょうかね。
以下ネタバレ感想
ええっと、カーペンター版の秀逸な所はですね
透明人間が出ているシーンが少ないって所なのね。
この主人公、昼寝をしている間に放射線を浴びちゃいまして
服ごと透明になっちゃうのね。
これがコメディとして実に面白い!
つまり劇中のほとんどのシーンはチェビー・チェイスが見えてないっていう体で、みんなが演技してるのよ。
チェビー・チェイス自身も自分の体が見えてないのよ。
なもんだから、飯を食うのも一苦労(箸が掴めない。口の位置が判らない)
食ったものが消化されていくのが見えるのでグロくて困り、服や靴を脱いだら、どこにあるか判らない。
ヒッチハイクをしようとすれば車に轢かれそうになり、街もまともに歩けない。
まぶたが透けているので、明るい場所では寝れず、部屋にいられなくなったら、危ないからビリヤード台の上で寝るしかない!
金も持てないから腹が減っても何も買えず、元々善良な男なだけに万引き一つもできない!!
タクシー捕まえるのも、一苦労だ!(ここの酔っぱらいを道具として使う所は最高だ!)
「透明人間はもっと気楽だと思っていた」
と苦々しくこぼす主人公をいつもの調子で飄々とこなすチェビー・チェイス!
日本では知名度が低い人だとは思うけど、この作品を観れば外国では人気者であるってことが理解できるんじゃなかろうか。
さて共演の人達ですが、なんとヒロインはダリル・ハンナ!
今じゃあタフな女傑といった感じの彼女ですが、その昔はブレードランナーのブリスとか(これは女傑かw)スプラッシュの人魚とかね、可愛いんだよね、この人。
全部キル・ビルが悪いんだよw
なんでダリル・ハンナとユマ・サーマンにサンダ対ガイラやらせんだよww
いや、エル・ドライバー好きだけどもwww
おっと脱線した。
今作でもダリル・ハンナはがっしりとしてるけどもちょっと天然入ってて可愛いです。
で、敵役のサム・ニールよ!
後にカーペンタ―作品の中では評価が真っ二つに別れる怪作にして珍作、マウス・オブ・マッドネス(私は大好き)で堂々の主演を張る彼ですが、ほんと、この人のニヤッとした笑いは最高ね!
悪魔の息子になってみたり(ダミアン)、恐竜に追われてみたり(ジュラシックパークシリーズのグラント博士)、デイブレイカーっちゅう珍吸血映画に出たりと、いわゆるジャンル映画に縁がある人なんですが、個人的にはレッド・オクトーバーを追え!の副艦長が良かったですなあ。ショーン・コネリー相手に負けてない柳のような演技ね。
今作でも、凶悪なくせにどこか憎めない政府エージェントをいつものように余裕たっぷりでやってます。
傑作なのは
透明人間に後ろから羽交い絞めにされて、頭に銃を突きつけられているっていう演技で、のけ反りながら歩いてるところ
ですかね。
あそこ笑っちゃうんだけども、ちゃんと見えないはずの透明人間の存在を感じる演技なんだよねえ。
そして隠れた功労者が、マイケル・マッキーン演じる親友(主人公はそう思ってないw)のジョージねww
実は彼、ダリル・ハンナを紹介し、別荘に主人公が無断宿泊したのに気づいても笑ってすまし、クライマックス直前の囮役を事情は分からないが買って出るという、ホントに都合のいい良い奴なんですな。
マイケル・マッキーン自身は、物凄く悪だくみしてそうな顔をしてらっしゃるんだけども、そのギャップでジョージの評価が上がる上がるw
だから、もうちょっと報われてほしいなあとか思ったり。
(まあ、後で主人公が遠回しに儲け話を教えているとは思うんだけどもね)
ちなみに本作の特撮は、少ないながらも大変出来が良く、インパクトが強いです。
例えば、主人公が昼寝をぶっこいていた建物も放射線を浴びたので透明化するんだけども、所々透明化が遅れている場所が残ってるのよ。
これが中々でして、そういう前衛絵画っぽくて気持ち悪いw
透明人間の特撮も、冒頭のガムから、化粧や包帯ぐるぐるも網羅。
クライマックスはラストじゃなくて、雨で姿が浮かび上がったチェビー・チェイスとのキスシーンですかね。
あそこは巧いよなあ。
ちなみにラストの攻防は特撮は使わないってのもこの作品らしくていいかな、と。
さて、本作には大変印象に残る台詞がございます。
サム・ニールが主人公の身元を調べさせ報告を聞くところなんですけども
主人公は
親友はおらず、両親もいない。仕事で敵を作ることもない。
つまり元から透明だった。
というところです。
ああ、これぞ本当の透明人間! と膝を打つ瞬間ですな。
というわけで、今日は暇だな、となったら観てもいい作品だと思いますね。
ただ、カーペンター作品としてみると、まったく物足りないと思うのね。
(いつもの横一列に並ぶ痺れるカットは、事故現場で政府役人が並んでいる一瞬のみ)
だからこそ、カーペンター作品の中では1,2を争うくらいとっつき易いと思うし、透明人間作品としては珍しい(一応)ハッピーエンド! ってのもよろしいかと。
以上!
しかし、久しぶりに再視聴した際に
ちんこが透明な悪夢って面白いんだけども、ラストを見るに、実際どうやったんだろう?と疑問に思い、こうに違いないと妄想してしまった
というのは、どうしようもないオッサンになってしまった証拠でございますなw
あと、原作ではサム・ニールは死なないのよね。
だからして、もやっとする現実的なエンドからファンタジックなラストに変わった本作は、カーペンター的には雇われ仕事だったと思うのだけども、スターマンとかを考えるに、カーペンターは割と少女漫画的な所があると思うので結構満足してるんじゃなかろうかと、考えてみたり。