メモ:今日暑くて、めっちゃ虫飛んでた。10月下旬とは一体ウゴゴゴ……
シー・フィーバー 深海の怪物 2019
監督:ナッサ・ハーディマン
主演:ハーマイオニー・コーフィールド
アラダラン・イスマイリ(と読むのかな?)
ジャック・ヒッキー
ストーリー
:海洋学科の学生であるハーマイオニーさんは、研究室で孤立していた。
しかし、友人関係よりも観察と考察を優先するハーマイオニーさんはどこ吹く風。
そんな孤高のハーさんに教授は博士号取得のために実地調査をやってきなはれと言う。
「いや、あちしはこうやって独りでいる方が、その~」
「行かなきゃ、博士号はやらん」
しぶしぶ漁船に向かうハーさんを待っていたのは、どうやらハーさんに気があるヒッキー君。
うん、ハーさん愛想はないけども、なんか可愛いんだよな。
あと胸がでけぇ。
そんなこんなで出航するも、ハーさんが赤毛だったことから船員の態度がつっけんどんになる。
赤毛は海では不吉らしい。
つまり、なんとかハーさんと二人っきりの機会を作りたいんで、その事実を伏せていた……ヒッキー君のハーさんと仲良くなろう大作戦だったわけですね。
うーん、最悪と不機嫌なハーさん。
そんなハーさんが乗る船、実は借金まみれの火の車!
ここで大漁じゃなきゃ、俺たちゃ終わりだ! とダグレイさんが
禁漁区に突貫!
コニーさんは、なにやってんのよ!? と怒るも、どうやら過去に亡くした娘さんの名前が付いた船を手放すのは……と旦那のダグレイを黙認。
だが、船が突然停止してしまう――
感想:バレ無し
滅茶苦茶面白かった!
いや、勿論後世に残る傑作とかじゃないし、『キング推薦!』なんて地雷宣伝文句を信じているわけでもなくてですね、こう、良い具合にツボをぐいぐい押される映画なんですわ。
また、ウィリアム・H・ホジスン、つまりマタンゴとか海洋ホラー小説のファンならば
おお!
と惚れ惚れするような展開(幽霊船!)とモンスターが出てくるのよね。
いや、もう、ホント素晴らしい!
また、実はバディものだったり、居場所を探す話だったりと好みの要素が過剰にならない程度に押し込まれているのもたまらんです。
欠点は、後半がバタバタし過ぎってところかな。
あれは尺のために大分カットしたんだろうなあ。
あと30分かければ、傑作になったのじゃないかしら?
以下ネタバレ感想
久しぶりに有能な主人公を見れたってだけでも、ホントに満足です。
無理やり海に潜らされ、モンスターの巨体を見た次のシーンで
あれは刺胞動物*1だと思う、と予測を立て即座に観察と研究に移る頼もしさよ!
また、密室感染ものお約束のパニックの火種を、主人公がどんどん潰しながら真相に迫っていくのも良い。
実のところ、モンスターは敵意とか悪意、害意があるわけではなく、禁漁区内にいる鯨に対して、産卵をしようとしただけだったという真相も、また虚しさがあっていいじゃないですか。
大騒ぎしてたのは人間だけで、海はいつも通りですってのがねえ……。
で、この産卵も実に理にかなってる。
哺乳類の体表にある傷口、もしくは粘膜等から侵入。体内で成長したら、一番弱い組織を破って外に飛び出すのである。
だから目が吹っ飛ぶのだ。
もしかしたら下血したりしてるかもしれないが、そこら辺は船が舞台だからカットかな?
主人公が冷静に遺体を検分するあたり、同じ密室感染もののXファイル『氷』を思い出す。
また、寄生された哺乳類が徐々に奇行に走り出すあたり、カタツムリの目に寄生するアレ*2とか、カマキリの腹に寄生するアレ*3とかを連想させて、良い感じである。
と、かように個人的に褒め処しかないのではあるけど
それでもクライマックスのバタバタはいただけないと思う。
ダグレイ船長の承諾殺人と、老婆の襲撃が同時進行なのは良いとして、両方ともあっさり短時間で済ませちゃうのは、ちょっとね。
まあ、その後、船長の奥さんであるコニーさんが、もう未練はないと、とっととずらかっちゃうのはすげえ理解できたんだけどもね。
だって旦那は死んだし、電流流されて多分亡き娘を重ねていた船首像は真っ黒こげ。船本体も巨大いそぎんの卵に汚染されてるわけだものな。
そりゃ
ただの船よ。
なんて台詞が出てくるわな。
まあ、このクライマックスのバタバタの中でも
バディを組んだ技師のイスマイリが実は泳げないって話をぶっこんでくるんですな。普通に考えたらいらないんだけども、ここら辺、この映画はホラーとして、ショック描写よりもドラマ重視にしたかったんだろうなという残滓が感じられたりしてですね、やっぱり面白いんだよなあ。
大学出の超優秀な男がなんでこんな所で働いてるの
っていう主人公の質問に
クライマックスのハラハラで言葉じゃない形で答えてくれるあたり、とても素晴らしい。
こんなに優秀なのに、そして泳げないのに、船の機関部で働くしかないという厳しい現実!
そう、この作品、世間ずれして学者肌のハーさんと
厳しい現実で辛酸をなめ続けてきた技師のイスマイリがコンビを組んで謎に挑むバディ物としての要素が実は三割から四割ぐらいを占めているのだ。
だから、ラストの二人の会話が中々泣けるものになっていて
あそこでハーさんがイスマイリに対して
友情を感じてちょっと涙ぐんだりするのがたまらねえんだよな。
そしてハーさんが選んだ
実にハーさんらしいラストもなんとも言えず素敵なのだ。
それまで、圧倒的な畏怖とおぞましさを湛えていたモンスターが
死にゆく主人公が最後に観察し分析する、最高の神秘に変わるマジック!
というわけで個人的には超お薦め!
とはいえ、モンスターパニックというよりも
海洋ホラーであるということをお忘れなく。
スローターハウス・ルールズでは憧れのパイセンをやっていたハーさんですが
そっちでは、なんで憧れのパイセンなの? とちょっとピンとこなかったんですが
なるほど。
この子は可愛いわ。
以上!