メモ:古本を買いに行ったら、ダブって買ってしまうことが多い。やはりスマホで写真撮っとくべきか。
カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇- 2019
監督:リチャード・スタンリー
(一応)主演:ニコラス・ケイジ
ジェヨリー・リチャードソン
マデリン・アーサー
エリオット・ナイト
ストーリー
:どうやら売れない画家であるニコラス・ケイジは、癌である奥さんの療養のためか、それとも都会に疲れたのか、アーカムの森の中にある父親の農場で隠遁生活をしていた。
奥さんがリモートワークで金を稼ぐ傍ら
ニコケイはせっせとアルパカの世話をする。
心優しきちょいゴス長女は魔術で母親の健康を祈りつつ、田舎からの脱出を願い、次男は大麻をくゆらせつつアルパカの世話。末弟のメガネ君は元気にそこらを走りまわる。
そんな生活感がまるでないニコケイ一家の庭に隕石が落ちてきた。
ちょいゴス長女と偶々知り合いになった水文学者のエリオット・ナイト演じるウォード(Ward Phillips)は異常な色を目撃。
更に水が汚染されていることに気づく……。
感想:バレ無し
ラヴクラフトが1920年代に書いた『宇宙からの色』または『異次元の色彩』の四回目くらいの実写化。
しかも監督が、あのリチャード・スタンリーである。
メジャーデビュー作のハードウェアがえらく雑誌で持ち上げられてて、期待に胸をパンパンに膨らませて鑑賞したら
ん?
と首を捻る作品だったわけで、続くダストデビルも
んん?
って感じで、そんな監督がドクターモローの島撮るよ!とか煽られても、当時の田舎シネマ小僧であった私は首をただただ捻るだけでありました。
まあ、ドクターモローの島は色々あって、ジョン・フランケンハイマーが撮ることになって、ファンゴリアのインタビューでロン・パールマンが監督交代の話題に及ぶと、『……その話題はやめようぜ』というくらいアレな状態だったらしい。
で、そんなリチャード・スタンリーのメジャー?復帰作でございます。
幸いにも鑑賞した前二作の記憶も朧気なので、割とまっさらな気持ちで見れたと思う。
結論から言えば
まあまあ面白い。
この『まあまあ』の部分に色々あるのだけれども
まずは、ニコケイファンは必見と断言できる。
最近、すさまじい勢いで公私ともに迷走しっぱなしのニコケイですが
(婚約した四日後に無効申請とか、もう酔った勢いとしか思えん)
アイラブ・パチンコ!と絶叫していた頃から漂っていたサイコ演技大爆発の作品が増えて、こっちとしてはニヤニヤしっぱなし。
で、今作はそんなサイコ演技が中盤から大暴走!
嬉しそうに、どう見ても奇形化した巨大トマトを収穫からの
連続トマトむしゃぶりつき!
まずくてブチギレ!!
そして、ゴミ箱への連続投擲!!!
からのスラムダンク!!!!!!
*ほんとに言う
ここだけで、もうお腹いっぱいですわ。
勿論他の役者陣も全員好演。
特にちょいゴス娘を演じたマデリン・アーサーは最高かな。
こういう怪奇映画において、一人で立っていて絵になる人ってのは貴重だと思います。
で、ラヴクラフト信者としてはどうかと言いますと……
以下ネタバレ感想
実は結構原作に忠実でして、冒頭に原作冒頭をナレーションしてみたり、引き寄せられる稲妻、『焼け野』、妻を二階に隔離、名状しがたきもの、色が最後に離脱するシーンを割とそのままにがっつり映像化している。
でもね
ラヴクラフトの映像化作品に特に顕著に表れる問題点もがっつり出ちゃってるのね。
要は、映像の怖さは、文章の怖さに勝てないってことです。
いくらニコケイが、見たこともない色だって言っても
私達にはピンクがかった紫にしか見えないわけですよ。
だから、畏怖とかおぞましさはゼロです。
むしろニコケイと同じ感想、キレイっす。
で、他の部分、例えば奥さんの成れの果てとか、原作をうまくアレンジしているんだけども、思いっきり言葉を濁した原作の方がやっぱり百倍おぞましいんですな。
ぶっちゃけ、ラヴクラフト作品は映像化に向いていないんだよね。
だからして、そこら辺は信者としては、自動的に割引して見ることになっちゃうのね。
となると、残るのはアウトレイジみたいな濃い個性の家族たちによるドラマだったりしてですね、こう――何の映画見てるんだ、これ? ってもやッとするんだよねえ。
あと、『宇宙からの色』の映像化として致命的な欠点もあったりする。
それは経過時間だ。
原作では、隕石落下からガードナー家が死に絶えるまで一年かかっている。
これが怖いんだよね。
今の目で見ると、放射線障害を連想させる一連の異常な変化がじりじりと人を、環境を蝕んでいく恐怖を原作はきっちり描いているわけです。
でも今作では三日ぐらいで描いているのよ。
いくらなんでも、短すぎね?
で、ストーリーの所にも書いたけど、ニコケイ一家の生活感が無さすぎるのも、かなり映画としては問題だと思うのね。原作通りの展開をやるために、子供たちを学校に行かせない(一応週末とは言ってるが、学校にどうやって通ってんだよ。馬か?)のは、どうなんだ?
あと『色は誰も逃がさない』という台詞がありながら
アルパカキメラ(Gスポット含む)の残骸を、保安官たちが回収しましたって、あそこ映画の繋がりが完全におかしいよね?
ってなわけで、ちょいゴス娘の『どうかここから脱出させて』という願いが、最大の皮肉をもって叶えられるクライマックスなんだけど、ウォードと色の攻防戦がとてもいいのに、上記のような粗がかなり目立つんで、心に響いてこないんですなあ。
ほんとなら、あそこは恐怖と悲しみがごっちゃになった極彩色の狂騒の果てに灰しか残らないっていう最高のシチュエーションのはずなんだけどね。
おかげで、その後のダムを見つめるウォードも蛇足感が半端ないっす。
原作の一匹残ってるを、ああいう形にしたのも、途中で馬が逃げてるんで台無しだしね。うーん……。
とはいえ、見方を変えるなら
故スチュアート・ゴードンがエンパイアで撮った
エンタメラヴクラフト路線の正当な継承作品ともいえるので、嫌いじゃないんだよなあ。
つまり一番似てるのは、実はフロム・ビヨンドだったりする。
というわけで、実に惜しい作品。
時間の消失とか、テレビやスマホを通じて浸食してきたり、隣人の元ヒッピーが真相に辿り着いてるとか良い感じなんだけどね~。
もうちょっとで傑作、もしくは怪作になったかもしれない佳作ってところかな?
お暇ならどうぞって感じで。
以上!
で、なんかこの後も同スタッフでクトゥルフ物やるかもって話だそうで
だから、一人だけ生き残る目撃者で語り手のウォードの名前が
Ward Phillipsなのね。
多分Howard Phillips Lovecraftからとった、シリーズのナビゲータ役なのかね?
ってことは今作のノリで現代風にアレンジしてウォード君を絡ませられそうな作品てことになるから
ダンウィッチの怪あたり?
更に余談ですが
今回のニコケイの吹き替えは山路さん!
ちょいゴス長女は、小見川千明!!
吹き替え、満点です!