メモ:なんかやたらとキングの作品が映像化されてるんだよなあ。それはそれでファンとしては嬉しいが、マキャモンのスティンガーとかやらないのかね?
アンダー・ザ・ドームの元ネタとして、数段面白いんだがなあ。
IT/イット THE END それが見えたら、終わり。(別に終わらないけどね) 2019
監督:アンディ・ムスキエティ
主演:マカヴォイとかビル・ヘイダーとかスカルスガルド家の二男様
ストーリー
:下水溝の下からサメ映画を薦めて、待てや!とかから27年
踊るピエロことペニーワイズを集団でボコってから27年。
当たり前だが生きていたペニワさんはデリーで悪さをおっぱじめる。
灯台守としてデリーにずっといたマイクは、なんでか知らんが
みんなの携帯電話番号を知っていた。
ずっと会っていなかったのにねー、すごいっすねー、楽屋に電話とか会社に電話とか、家電とかじゃなくて、個人に電話するんすよ。
まあね、昔は電話帳に電話番号載ってましたからね。
でも今じゃこの手段は使えないんですね。
うん、そこら辺はガン無視して、ルーザーズクラブはデリーに再結集するのであった。
なんだかなあ。
*私は原作『IT』の大信者であることを踏まえて、以下をお読みください。
感想:バレ無し
前作『IT 恐怖の殺人ターゲット それが見えたら、終わり。』は
邦題のダサさもさることながら、実にダメな映画であった。
点数で言えば50点。
百点満点のシーン、例えば冒頭のジョージーが襲われるシーンで、排水溝から腕がぐーっと伸びてくる所などは、原作にないけども、原作越えしているシーンだと思う。
だが、例えばニーボルストリートの廃屋に再結集する時に、ルーザーズのそれぞれが葛藤を乗り越えて結集するシーンを省略して全員分描かない、とか原作を一ミリも理解していない零点のシーンが多々ある。
だから大甘に採点して50点。
いや、だってさ、旧テレビ版て約三時間で大人編と子供編をミックスさせて、それなりに纏めてるんだよ。
なんで子供編だけに絞って二時間越えしてるのに、ドラマをはしょるの?
しかも、下水道で『ふわふわ浮くよ』のあれまで見せちゃってさ
放置?
通報しろよ!(遺体回収の意味で)
……で、そんなこんなで『THE END』
(めんどいので以下、前作をC1、今作をC2とす)です。
続編しすぎていて、単品映画としては完全に駄目。
でもC1の保管と底上げは大成功している。
C1、もしくは原作ファンは(一応)一見の価値あり。
ああ、このシーンが大スクリーンで観れたって感動はキッチリある。
あとは(当たり前なのだが)ちゃんと今回のC1とC2だけで話として完結しているという点もかなりでかい。
設定もきっちり今回の二部作用に作ってある。それがぶれてないのも感心した。
(死の光の設定は、映像だけで押し切っていて、原作越えてると思う)
以下映画やら原作やら、他のキング作品のネタバレ感想
すげぇ!
エイドリアン・メロンと煙穴が大画面で観れた!
はい、原作信者としてはこれだけで今回のC2は大満足でした。
勿論、原作通りではなく
メロン殺害は、川に落とした連中はペニワを目撃する前に逃亡。
故に後に逮捕され「こいつ今、一級殺人について自白しているって認識がねえのか」と警察官に腹の中で憐れに思われる描写とかもカット。
煙穴は、リッチーとマイクが子供の頃に体験するわけではなく
灯台守として残ったマイクが大人になって
ネイティブアメリカンの集落でペニワ調査中に体験する、という風に改変。
でもちゃんとメロンは脇腹を噛まれるし
「おかえりおかえりおかえり」の文字もあるし
ペニワは外宇宙からちゃんと来る。
(これ元ネタはIT came from outer spaceっていう古典SF映画のタイトルからなのよ)
旧テレビ版では完全におもちゃだった、中華料理屋のおみくじクッキーから出る「はいずる眼」(これまた古典SF映画)も高クオリティ!
セコハンクローズの店主はキング御大だ!
ゲーセンにおいてあるのはダブルドラゴンじゃなくてストリートファイターだ!
(これは原作ニードフルシングスネタです。すいません)
とまあ、他にもキューブリック版シャイニングの「おこんばんは!」
スタンの生首が、誰がどう見ても物体Xのスパイダーヘッドになって、リッチーにHIRUKO(塚本晋也監督のアレ)組み付きをかましてみたりと、なんか突然のはっちゃけホラーバラエティぶりで、前作が大ヒットしたんで、色々OKになったんだろうなあと嬉しい反面、
ホラー度はビックリ箱レベルまで後退。
まあ、前作も冒頭のジョージー殺害以外はアレだが、今回は前作越えのシーンは皆無。ものすげー一瞬か画面外で血がぶしゃー!
その代わりと言っちゃあなんだが、前作の話を今作で新たに追加された設定、例えばリッチーがゲイだった、からの前作のスタンの言葉で救われて、ペニワ戦に行く覚悟が決まる、とか、前作を踏み台にしたドラマ運びで構成の単純さを補っているのが中々面白い。
また、前作で大変不満であった
なんかテンパってるペニーワイズが
今回はちゃんと意味があることになっているのも嬉しい。
今回のペニーワイズは、実はメチャクチャ弱いのである。
狩猟対象に『怖い』と認識されると無限の力が出せるが
『弱い』と認識されてしまうと
存在そのものを弱体化されてしまうのだ。
ペニワさんは所謂シェイプチェンジャーなわけだから
これには大変納得。
大変素晴らしい原作からの改変だと思う。
原作の最終戦は『精神同士の噛みつきあい』で、忠実にやっちゃうと旧テレビ版の最後みたいにつっ立ったまま、みんなでぼーっとしてるだけ。
だから今回のラストバトルは大満足。
しかも前回の集団リンチが一応伏線になってるわけで、これも実に上手い。
後は最大の良改変はスタンの自殺の理由だ。
原作や旧テレビ版は、記憶がぶり返してきたことにより
恐怖に耐えられなくなって自殺だったのが
今回は、ルーザーズの結束を強くするために自殺したのである。
これが原作最大の泣き所で旧テレビ版ではカットされた
ショーウィンドウに映る、スタンとエディに繋がるわけで
あそこは本当に最高ですわ。
役者陣は全員好演。
特に良い感じなのはベン役とエディ役の人かな。
子供時代の神経質さとか、悲しさとか切なさが地続きで感じられて
とても良い。
(実は、あの濃いマカヴォイが一番影が薄くて吃驚)
勿体ないのはヘンリー大人版の人で、中々良い感じに狂ってたんだけど、旧テレビ版よりも出番が少なくなってしまっていてですね、もうちょっと……こう……。
いや、最初はね、監督が「MAMA」の人だから
絶対ダメ映画だこれ、絶対どっかネジが外れてるわと思ったところにC1ですからね。もう本当にC2は期待ゼロだったんですよ。
でも、まあ、本当に良い方に転がって良かった……。
できることならテレビシリーズでやるべき内容で
大体、旧テレビ版の原作省略が完璧すぎて、あれを外してやらなければならないというのがハードル上がり過ぎで、どっかのネット記事で読んだけど
「ヒットしたら2作っていいよ」というビジネスとしちゃあ当たり前だけど素材としては絶対ダメな会社の姿勢の基で、監督交代から特大ヒットにこぎつけたんだから、ここは素直に
良くやったよ、と褒めるべきでしょう。
とはいえ、ストーリーで触れたように
なんかネジが所々抜けたまま動いてる精密機械みたいな間抜けさが漂ってしまったのも、また事実。
C2予告編を見ると、今回も削除シーンが多そうだから
完全版として六時間ぐらいのブルーレイ出してください。
買うから。
以下、更にキング世界についてのネタバレ
キング作品群において、外から来る脅威に対し、手を繋ぎ合って対抗している集団というのが幾つもあります。
その輪はひどく脆いのですが、同時にとてつもない力を秘めているのですね。
だからスタンは、輪の力を強める為に自殺したわけです。
この輪、つまりは外からの悪夢を絡めとる結界は
ドリームキャッチャーなわけです。
故にドリームキャッチャーでは、ベンが建てた施設に
『ITはまだ生きている』(だったかな?)なんて落書きが出てきたりします。
ちなみに原作ではペニワは雌です。
最後はビルと精神対決して勝利目前に、リッチーが乱入。
リッチーに精神をズタズタにされ弱体化したところを、追いかけてきたビルに本体に手を突っ込まれて心臓を握りつぶされ死亡します。(他の面子は確か卵を潰してた)